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コラム 先哲の知恵を現代に活かす (2)政権交代を実現する方法

コラム 先哲の知恵を現代に活かす (2)政権交代を実現する方法

 先哲がとらえた事実や真理を、現代の観点から読み直し、命題としてご紹介します。今も昔も人間の本質は変わっていないと思われる方もいるでしょう。先哲の言葉には何の包み隠しもなく、今の私たちからすれば過激ともみえる表現でズバリと切りこんできますから、現代的な諸課題の分析や解決にご利用いただけるかと思います。

【政権交代を実現する方法】
 【政権交代を防ぐ方法】で列挙した同じ法則を、政権交代を実現する立場で書き直してみましょう。人間に関する何らかの法則が、もし真理の一端をとらえている場合には、つねにこのような書き換えが可能です。また、一つの法則を異なる場面に適用してみることで、その法則自体への理解も深めることができることでしょう。

 一般に、国民を怒らせて政権に反対する共通の目的のために団結させるようなことが起こらない限り、政権交代は起らない。そこで、
対策1 まずは自分の損得でよいから、政策に関心を持て! そこに不公平はないか? 不正義はないか? 怒りを感じるなら声をあげよ!
 しかし一般に、多数派である貧しい人たちが不満を抱えていても、彼らはやっと生活するのに忙しく、政治的意識にも乏しく、余裕も知識もある恵まれている人たちによって扇動されない限り政治的な動きは概してにぶい。そこで、大切なことは次のことである。
対策2 毎日の生活で感じる心配や不満の気持を大切に!
対策3 自分が満足していても、世の中を見まわしてみよう。困っている人は? 差別されている人は? 不公平に優遇されている人は?
対策4 もし、あなたが特に大きな不満もなく暮らしているのなら、ときには次のように考えてみよ! これも、政策なのだ。
対策5 美辞麗句で飾られている政策には注意せよ! あなたが将来に希望をつないでいるとき、陰でしっかり実益を取っている人たちがいる。
対策6 首相や大臣の口から漏れた秘密にしておくべき政策の真の意図を、聞き逃すな!
 政権側は、不満を持つ人たちや反対派の人たちを団結させないように、しっかり手を打ってくる。そこで、注意すべきは、次のことだ。
対策7 独裁的なリーダーが運営する組織には、注意せよ。頭だけが腐っている場合がある。
対策8 組織内で、組織を分裂させるような動きをする人に注意せよ。
対策9 反対派のいろいろなグループを、お互いに反目させたり、お互いに信用しないようにさせる言動をする人に注意せよ。
対策10 国家というものを、ありのまま理解しておくこと。

ベーコン随想集 (岩波文庫 青 617-3)


【対策1 まずは自分の損得でよいから、政策に関心を持て! そこに不公平はないか? 不正義はないか? 怒りを感じるなら声をあげよ!】
 政府の行なっている政策に関心を持って、まずは自分自身にとっての利害の観点でよいから、それを評価してみよう。自分にとって得か損か。無関心でいると、知らぬ間に損をしてしまうかもしれない。そして、自分にとって損なときには、得している人たちがいないかどうか、調べてみよ。不公平なこと、正義にかなわないこと、不合理なことがないかどうか。そこに怒りを感じるのなら、それに対して声をあげよう! こういう声が集まって、大きな力となる。
 「反乱の原因と動機は、宗教における革新、重税、法律や慣例の変更、特権の廃止、一般的圧政、くだらない人物の抜擢、他国人、食糧不足、除隊兵士、どうにもならなぬ派閥争い、そのほか国民を怒らせて共通の目的のために集合団結させるすべてである。
 対策について言えば、一般的予防法がいくつかあるかもしれない。それについて述べることにしよう。適切な治療について言えば、それは個々の病弊に応えなければならない。したがって、それは規則よりむしろ思慮に委ねなければならない。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.73、[渡辺義雄・1983])

【対策2 毎日の生活で感じる心配や不満の気持を大切に!】
 とくに恵まれているわけでもない、圧倒的多数の普通の人たちの、毎日の生活で感じる心配や不満が、世の中を良くしてゆくためには、いちばん必要なものだ。毎日の生活が大変で時間がなくても、まずは自分の損得からでよいから、政策に関心を持とう。ただ、不公平や不正義に気がついた場合でも、特権的に恵まれている人たちに怒りを感じるのは、間違っている。不正義は政策にあるのだから。
 恵まれており知識もあり社会的に影響力を持っている人たちは、今こそ、自分自身の個人的な利害をはなれた立場から、自らを育んでくれたこの社会に対して、名誉ある足跡を残せ! この人たちには、恐らくすべてが見えている。何が自分にとって得なのか、また何が正義なのかも。
 「これらの一つが不満である時、危険は大きくない。一般大衆は上層階級によって扇動されない限り、動きがにぶいし、また上層階級は群衆がみずから動き出そうとしない限り、微力だからである。上層階級が下層階級の間に騒動が持ち上がるのをひたすら待ち望み、いよいよとなったら態度を表明しかねない時が危険である。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.75、[渡辺義雄・1983])

【対策3 自分が満足していても、世の中を見まわしてみよう。困っている人は? 差別されている人は? 不公平に優遇されている人は?】
 社会全体がある程度豊かになると、多くの人が、日々の小さな幸せである程度は満足に暮らせるようになる。また、足るを知って日々の生活を大切にするのが、本当の幸せとも言えよう。しかし! 本当に困っている人たちはいないのだろうか? 差別されている人たちはいないのだろうか? 逆に不公平に優遇されている人たちはいないのだろうか?
 「第一の対策もしくは予防法は、前述した反乱の材料となる原因をあらゆる手段を尽くして取り除くことである。それは国内の欠乏と貧困である。」(中略)「何よりもまず、国家の財宝と金銭が少数の手に集まらないように、適切な政策が取られなければならない。さもなければ、国家に大きな蓄えがあっても、飢えることがありうるからである。また金銭は肥料のようなものであって、ばら蒔かなければ役には立たない。そうするには真っ先に、暴利をむさぼる高利貸し、独占、大牧場などを抑制すること、少なくともきびしく取り締まることである。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.74、[渡辺義雄・1983])

【対策4 もし、あなたが特に大きな不満もなく暮らしているのなら、ときには次のように考えてみよ! これも、政策なのだ。】
 もし、あなたが特に大きな不満もなく暮らしているのなら、ときには次のように考えてみよ! これも、政策なのだ。
 「苦痛や不満を解消させるために適度の自由を与えることは、(そのために度はずれの尊大とか横柄とかにならない限り)安全な方法である。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.75、[渡辺義雄・1983])

【対策5 美辞麗句で飾られている政策には注意せよ! あなたが将来に希望をつないでいるとき、陰でしっかり実益を取っている人たちがいる。】
 政策が美辞麗句で飾られているときは、注意すること。実際に、その政策でなされることは何なのか? それと引換えに失うものは何なのか? 飾られた政策の目的とは、まったく相反する実体を持っている政策も存在することを覚えておこう。あなたが何も知らず、いつかは良くなると希望を抱いてがんばっているとき、しっかりと実益を獲得している人たちもいることを覚えておこう。
 「時宜をはかって巧みに希望を抱かせつづけ、人々を希望から希望へ進ませることは、不満という毒に対する最上の解毒剤の一つである。人々の心を満足によって引きつけられなくても、希望によって引きつけられるとしたら、またどんな害悪もはけ口の希望が少しもないほど、避けられぬものではないと思わせるように、事態を処理できるとしたら、それは賢明な統治と行政の確かなしるしである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、pp.75-76、[渡辺義雄・1983])

【対策6 首相や大臣の口から漏れた秘密にしておくべき政策の真の意図を、聞き逃すな!】
 首相や大臣の口から、ふと漏れる才気走った辛辣な言葉が、国民の間に不満の世論を燃え立たせて、政権を危なくする場合がある。「とくに短い言葉に気をつけなければならない。それは矢のように飛び出し、彼らの秘密の意図から発射されたと思われる。くだくだしい談話は、かえって退屈なものであって、それほど注意されないからである。」
 「私は王侯の口からふと洩れた才気走った辛辣な言葉が、反乱を燃え立たせたことに気づいている。」(中略)「確かに、微妙な事件や不安定な時代に対処するには、王侯は自分の言うことに気をつける必要がある。とくに短い言葉に気をつけなければならない。それは矢のように飛び出し、彼らの秘密の意図から発射されたと思われる。くだくだしい談話は、かえって退屈なものであって、それほど注意されないからである。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.77、[渡辺義雄・1983])

【対策7 独裁的なリーダーが運営する組織には、注意せよ。頭だけが腐っている場合がある。】
 どんな組織も、有能で名声もあるリーダーの資質で支えられているという要素は、確かにある。しかし、その組織内の運営のされ方が、組織を構成するメンバーとの関係で、民主的なものであるかどうかに注意せよ。その組織がリーダーのカリスマに依存した独裁的なものの場合、ときとして、組織のトップだけが腐ってしまっている場合があることを、覚えておくと良いだろう。すなわち、このようなリーダーは、知らない間に政権側に引き入れられる誘惑に、つねにさらされているのである。

【対策8 組織内で、組織を分裂させるような動きをする人に注意せよ。】
 組織内で、組織を分裂させるような動きをする人に注意せよ。彼は、すでに政権側に通じているかもしれない。組織内においても、さまざまな意見があり、この意見の違いこそが柔軟でより良い組織決定の涸れることのない源泉である。しかし一定の目的を持った組織のメンバーは、そのときどきの組織の総意である決定を、個人的な意見はいったん留保して、守らなければならない。もし、彼が意見の相違を理由に、組織を分裂させる方向に動く場合には、注意せよ。

【対策9 反対派のいろいろなグループを、お互いに反目させたり、お互いに信用しないようにさせる言動をする人に注意せよ。】
 反対派のいろいろなグループを、お互いに反目させたり、お互いに信用しないようにさせる言動をする人に注意せよ。そのような言動をする人は、一見して彼の立場がどのようなものであろうとも、すでに政権側の息がかかっているかもしれないと思うこと。
 「不満を抱く人々が頼りにし、彼らの団結の中心になれる有望な、あるいは適当な頭首がいないように用心し予防することも、衆知の、しかしすぐれた注意事項である。私の言う適当な頭首とは、傑出して名声もあり、不満を抱く一派に信頼があり、彼らの注目の的となり、当人自身にも不満があると思われる人のことである。この種の人物は国家の側に、しっかりした間違いのない仕方で引き入れて、これと妥協するか、さもなければこれに対抗させるために、同派の他の誰かと対決させて、その名声を二分しなければならない。一般に、国家に敵対するすべての党派や同盟を分裂させたり分断したりして、彼らを互に反目させ、少なくとも信用しないようにすることは、一考の余地がある対策である。国家の行政を支持する人々が、仲たがいや派閥争いに明け暮れ、反対する連中が仲よく団結しているならば、それは絶望的な状況だからである。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.76、[渡辺義雄・1983])

【対策10 国家というものを、ありのまま理解しておくこと。】
 国家というものが、最終的には物理的な実力によって担保されているという基本的な事実は、忘れないでおくこと。
 「最後に、王侯は万一に備え、反乱を初期のうちに鎮圧するために、武勇に秀でた誰か傑出した人物を、一人またはそれ以上、必ずそば近くにおくがよい。そうしないと、騒動が突発した初期に、宮廷内に相応以上に、動揺が起こるにきまっているからである。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.77、[渡辺義雄・1983])

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政権交代を防ぐ方法
政権交代を実現する方法

フランシス・ベーコン(1561-1626、哲学、神学、法学)
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(出典:wikipedia(フランシス・ベーコン)




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コラム 先哲の知恵を現代に活かす (1)政権交代を防ぐ方法

コラム 先哲の知恵を現代に活かす (1)政権交代を起こさない方法

 先哲がとらえた事実や真理を、現代の観点から読み直し、命題としてご紹介します。今も昔も人間の本質は変わっていないと思われる方もいるでしょう。先哲の言葉には何の包み隠しもなく、今の私たちからすれば過激ともみえる表現でズバリと切りこんできますから、現代的な諸課題の分析や解決にご利用いただけるかと思います。

【政権交代を防ぐ方法】
 一般に、国民を怒らせて政権に反対する共通の目的のために団結させるようなことが起こらない限り、政権交代は起らない。注意すべき政策は、
対策1 特権の廃止、重税には注意すること。
 しかし一般に、多数派である貧しい人たちが不満を抱えていても、彼らはやっと生活するのに忙しく、政治的意識にも乏しく、余裕も知識もある恵まれている人たちによって扇動されない限り政治的な動きは概してにぶい。そこで、大切なことは次のことである。
対策2 その際、上層階級と一般大衆の両方に不満を抱かせないこと。とくに、上層階級の人たちの不満が危険である。
 そうは言っても、限度もある。
対策3 貧富の差を大きくし過ぎないこと。
 貧富の差や不公平があったとしても、ある程度の生活水準が確保できていれば、政権は維持できる。その際、考慮すべきは次のことである。
対策4 国民に適度の自由を与えること。
対策5 国民に希望を抱かせ続けること。
対策6 秘密にしておくべき政策の真の意図を、ふとした「失言」によって漏らさないこと。
 また、不満を持つ人たちや反対派の人たちを団結させないように、しっかり手を打つこと。
対策7 反対派のリーダーを国家の側に引き入れること。
対策8 反対派にもう一人のリーダーを立て、反対派を分裂させること。
対策9 反対派を分裂、分断し、お互いに反目させること。
対策10 実力による担保も必要だ。

ベーコン随想集 (岩波文庫 青 617-3)


【対策1 特権の廃止、重税には注意すること。】
 恵まれている人たちに対しては、特に特権の廃止、一般的に法律や慣例の変更によって既得権益を侵すような政策に注意が必要だ。また、多数派である貧しい人たちに対しては、重税など一般に貧困につながるような政策に注意すること。そのほか、「宗教における革新、重税、法律や慣例の変更、特権の廃止、一般的圧政、くだらない人物の抜擢、他国人、食糧不足、除隊兵士、どうにもならなぬ派閥争い、そのほか国民を怒らせて共通の目的のために集合団結させるすべて」に注意すること。
 「反乱の原因と動機は、宗教における革新、重税、法律や慣例の変更、特権の廃止、一般的圧政、くだらない人物の抜擢、他国人、食糧不足、除隊兵士、どうにもならなぬ派閥争い、そのほか国民を怒らせて共通の目的のために集合団結させるすべてである。
 対策について言えば、一般的予防法がいくつかあるかもしれない。それについて述べることにしよう。適切な治療について言えば、それは個々の病弊に応えなければならない。したがって、それは規則よりむしろ思慮に委ねなければならない。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.73、[渡辺義雄・1983])

【対策2 その際、上層階級と一般大衆の両方に不満を抱かせないこと。とくに、上層階級の人たちの不満が危険である。】
 恵まれている人たちの階層と、貧しい人たちの階層の両方が、共通の不満や目的をもって団結しない限り、だいじょうぶである。なぜなら、多数派である貧しい人たちが不満を抱えていても、彼らはやっと生活するのに忙しく、政治的意識にも乏しく、余裕も知識もある恵まれている人たちによって扇動されない限り政治的な動きは概してにぶい。逆に、恵まれている人たちが不満を抱え、貧しい人たちの間に騒動が持ち上がるのを待ち望むような状況が生まれたときには、危険である。
 「これらの一つが不満である時、危険は大きくない。一般大衆は上層階級によって扇動されない限り、動きがにぶいし、また上層階級は群衆がみずから動き出そうとしない限り、微力だからである。上層階級が下層階級の間に騒動が持ち上がるのをひたすら待ち望み、いよいよとなったら態度を表明しかねない時が危険である。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.75、[渡辺義雄・1983])

【対策3 貧富の差を大きくし過ぎないこと。】
 国内の欠乏と貧困を緩和すること。貧富の差があまりにも大きくなりすぎて、特定の人たちが暴利をむさぼっていることが、はっきりと国民にわかってしまうと危険である。
 「第一の対策もしくは予防法は、前述した反乱の材料となる原因をあらゆる手段を尽くして取り除くことである。それは国内の欠乏と貧困である。」(中略)「何よりもまず、国家の財宝と金銭が少数の手に集まらないように、適切な政策が取られなければならない。さもなければ、国家に大きな蓄えがあっても、飢えることがありうるからである。また金銭は肥料のようなものであって、ばら蒔かなければ役には立たない。そうするには真っ先に、暴利をむさぼる高利貸し、独占、大牧場などを抑制すること、少なくともきびしく取り締まることである。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.74、[渡辺義雄・1983])

【対策4 国民に適度の自由を与えること。】
 苦痛や不満を解消させるために、適度の自由を与えること。
 「苦痛や不満を解消させるために適度の自由を与えることは、(そのために度はずれの尊大とか横柄とかにならない限り)安全な方法である。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.75、[渡辺義雄・1983])

【対策5 国民に希望を抱かせ続けること。】
 「時宜をはかって巧みに希望を抱かせつづけ、人々を希望から希望へ進ませることは、不満という毒に対する最上の解毒剤の一つである。人々の心を満足によって引きつけられなくても、希望によって引きつけられるとしたら、またどんな害悪もはけ口の希望が少しもないほど、避けられぬものではないと思わせるように、事態を処理できるとしたら、それは賢明な統治と行政の確かなしるしである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、pp.75-76、[渡辺義雄・1983])

【対策6 秘密にしておくべき政策の真の意図を、ふとした「失言」によって漏らさないこと。】
 首相や大臣の口から、ふと漏れる才気走った辛辣な言葉が、国民の間に不満の世論を燃え立たせて、政権を危なくする場合がある。首相や大臣は、自分の言うことに気をつける必要がある。「とくに短い言葉に気をつけなければならない。それは矢のように飛び出し、彼らの秘密の意図から発射されたと思われる。くだくだしい談話は、かえって退屈なものであって、それほど注意されないからである。」
 「私は王侯の口からふと洩れた才気走った辛辣な言葉が、反乱を燃え立たせたことに気づいている。」(中略)「確かに、微妙な事件や不安定な時代に対処するには、王侯は自分の言うことに気をつける必要がある。とくに短い言葉に気をつけなければならない。それは矢のように飛び出し、彼らの秘密の意図から発射されたと思われる。くだくだしい談話は、かえって退屈なものであって、それほど注意されないからである。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.77、[渡辺義雄・1983])

【対策7 反対派のリーダーを国家の側に引き入れること。】
 反対派の団結の中心となりうる傑出して名声もある人物は、多少妥協をしても、国家の側にしっかりと引き入れてしまう。

【対策8 反対派にもう一人のリーダーを立て、反対派を分裂させること。】
 反対派のリーダーを引き入れることができない場合は、同じ反対派のなかに、そのリーダーとは違う他の誰かを立てて、リーダーの名声を二分するように仕向け、できれば反対派を分裂させる。

【対策9 反対派を分裂、分断し、お互いに反目させること。】
 一般に、国家に敵対するすべての党派や同盟を分裂させたり分断したりして、彼らを互に反目させ、少なくとも互いに信用しないようにする。
 「不満を抱く人々が頼りにし、彼らの団結の中心になれる有望な、あるいは適当な頭首がいないように用心し予防することも、衆知の、しかしすぐれた注意事項である。私の言う適当な頭首とは、傑出して名声もあり、不満を抱く一派に信頼があり、彼らの注目の的となり、当人自身にも不満があると思われる人のことである。この種の人物は国家の側に、しっかりした間違いのない仕方で引き入れて、これと妥協するか、さもなければこれに対抗させるために、同派の他の誰かと対決させて、その名声を二分しなければならない。一般に、国家に敵対するすべての党派や同盟を分裂させたり分断したりして、彼らを互に反目させ、少なくとも信用しないようにすることは、一考の余地がある対策である。国家の行政を支持する人々が、仲たがいや派閥争いに明け暮れ、反対する連中が仲よく団結しているならば、それは絶望的な状況だからである。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.76、[渡辺義雄・1983])

【対策10 実力による担保も必要だ。】
 最後の手段として、実力行使が必要な場合には行使ができる準備を保持し、行使する場合は初期のうちに鎮圧すること。
 「最後に、王侯は万一に備え、反乱を初期のうちに鎮圧するために、武勇に秀でた誰か傑出した人物を、一人またはそれ以上、必ずそば近くにおくがよい。そうしないと、騒動が突発した初期に、宮廷内に相応以上に、動揺が起こるにきまっているからである。」 (フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.77、[渡辺義雄・1983])

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